Japan-Bhutan Friendship Association

2008年に我が国外務省の依頼で、ブータン初の総選挙の外国人監視団員としてブータンを訪問しましたが、早いもので5年がたち、 今年6月には第2回総選挙が実施されます。今回の選挙はどうなるのか、現政権の調和党内閣のこれまでの政策や実績を国民がどう評価するのか大きな関心を もって情報収集に努めているところです。
聞くところによると、現在、選挙管理委員会に登録された政党は、現政権の調和党(DPT)、野党の国民民主党(PDP)の他に、みんな平等党(BKP)、仲間の党(DNT)、民社党(DCT)
が加わり5党でもって戦われることになった模様です。政党の略号だけでは何だかさっぱり判らないですね。
ご存知のように、現存の調和党(JigmeY.Thinley)、国民民主党(Tshering Tobgay)の党首はいずれも官僚経験者ですが、新党についても同様で、平等党党首のSonam Tobgay
は、 農業省、仲間の党のJigme Zangpoが最高裁判事、民社党のLily Wangchuk(唯一の女性党首)が外務省といずれも官僚経験者です。被選挙権資格の「65歳未満、必要な教育水準、外国人と結婚してない」の中の「必 要な教育水準」が、前回の場合は「大学卒以上」とある限り、党首だけでなく、多くの候補者が官僚となるのは仕方のないことですが、今回もかなりの数の官僚 が立候補するだろうことが想定されます。前回の選挙時で、ブータンの大卒者は約15,000人で、当時の人口からみると僅か2%、有権者比でも4%弱にし かなりません。被選挙資格者は、かなり限られていることになります。
立候補にあたっては、退職することが前提で、一度退職すると現職に戻れませんので、
官僚が多数立候補すると、優秀な人材が一気に減るということになります。そのこともありますが、同時に私にとっては友人である多くのブータン人が敵・味方に分かれて戦うのには、多少気持ちが痛むところがあります。
5党が正式登録されたことで、憲法(第15条5項・6項)で謳われた政党を二党に絞る予備選が実施されることになったのは喜ばしいことです。2011年に 当協会会長と事務局長と共に先代のJigme・Singye・Wangchuck国王を拝謁した際に、「選挙は多数の政党によって争われる方が望ましい」 とのお言葉もありました。
ただ、前回のマニフェストでも、調和党と国民民主党との間に大きな差がなかったのですが、3新党が現2政党との違いを いかに鮮明に打ち出せるかは定かでありません。たいした違いがなければ、先の我が国の総選挙同様に、多党化時代を迎えても、結局はこれまで政権をとった経 験のある政党が有利な気がします。一方で、民主化が進行し、ブータンの新聞見てますと、現政権の堂々たる批判なども掲載されてますので、国民意識の高まり から、思いがけない結果が出るかもしれないとの期待もあります。その場合は、現野党の国民民主党が割を食うのではと想定しています。いずれにせよ、現在の 与党:野党が45:2という状態のバランスが、もう少し接近しないか、して欲しいというのが私の考えです。
ところで、私が前回の総選挙で感じた点について、どう改善されたのかも興味のあるところです。

  1.  ブータンの選挙は、市民権を得た先で投票することが原則なので、特にティンプー
    に居住する人は、その地まで出向かなければならない(一部の資格のある人は郵送投票も可)。ブータンは、ご存知のとおり、交通手段が限られているため、移動に片道一週間かかるところもあります。
  2. 憲法上、「宗教者(僧侶)は、政治を越えて存続する」とあるところから、参政権(選挙権)がない。前回の総選挙以前は、国民議会の議員150名の内、10名が仏教界からの代表でした。
  3. 最初に触れた被選挙権は、前回は「大卒以上」とされていたが、せめてクラス10修了者までと拡げられないのか。現政党でも前回の選挙では、候補者の獲得には難航されたと言われる。
  4. 憲法上(第23条10項)で、被選挙権に「ブータン国民以外の者と婚姻している者は、その資格を剥奪する」とあるのはまだしも、それを選挙権まで拡げて解釈するのはいかがなものか。我が国の女性と結婚したブータン人男性に選挙権がないのはなかなか理解できません。

上記の1については、一昨年ブータンの上院(国民評議会)の議員団が来日した際に、
話し合ったことがあり、議員のひとりから、「自分も選挙毎に国民の大移動があることについては、何らかの改善が出来ないか検討し、提案してもいる」との話がありました。

総選挙は、ブータンの今年の大イベントですので、皆さんも注目されてはいかがでしょうか。

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