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新たな時代へ―国王声明に対する国民の反応

2005年12月17日(タシヤンツィ)
2008年の国王交代―国中の人々は驚きのあまり言葉を失ったに違いない。もちろん、国民は国王陛下から皇太子殿下に王位が継承されること自体は歓迎している。しかし、国王陛下はなぜこんなにも早急に退位されるのだろうか。
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写真) 試合をご観戦される国王ご一家

 12月17日国王陛下がこの声明を発表されたのは、タシヤンツィという最も僻地の県においてであった。ナショナル・デーを国王ご一家と共に祝福しようと集まった農民、遊牧民、ゴムチェン(僧侶)、教師、学生、公務員、計8,000人以上にも上る群集は当惑のあまり、言葉を失った。待ちに待ったこの日のために、老若男女が、数日間をかけて山道をやってきていたのである。そこで彼らを待ち構えていたのは、誰一人としてこれまでに味わったことのない強い衝撃であった。
 それにあわせて、国王陛下は、皇太子殿下が国王としての最大の能力を発揮するためには経験が重要であること、そのために、2008年以前に皇太子殿下に権力を移譲されることも発表された。そして、国王陛下の祈りとは、「ジグメ・ケサル・ナムギェル・ウォンチュックの治世においても、かわらずブータン王国に繁栄があらんこと、平和と幸福のもと国家がさらに発展してゆくこと、そして国民の掲げるあらゆる国家目標、希望、志が達成され、ブータン国民が更なる、満足感と幸福に満たされんこと」である。
 さらに、国王陛下が強調されたのが憲法の導入である。憲法導入の最大の目標は、安全保障、国家の主権、国民の関心事と領土を長期的に維持できる政治体制を構築することにある。そして、選挙に関しては次のように表明された。議会制民主制度および選挙制度の普及運動を目的として、選挙管理委員会が全20県に対して普及活動を行う予定である。そして2008年には議員を選出する第一回国政選挙が実施される。

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写真)この日はタシヤンツィにとって歴史的な日となった。

 国王陛下とご一家は、祝典に参加した住民に昼食を振舞い、一日を住民と共に過ごされた。khuru, sogsum, jigdumといった競技にも参加された。学生や地域の踊り手たちは仮面舞踏や伝統の歌・踊りを披露した。また、祝典のしきたりに則り、地元の指導者や住民を相手にした綱引きにも参加された。式典に参加した人々は口々に、その幸福の意をあらわにし、まるで夢のようだっと、コメントを寄せている。
 タシヤンツィという最も僻地にすむ、お年寄り世代は、この20年のまさに夢のような開発の進展を目の当りにしてきている。Womenang地区在住の57歳のサンゲイ・ドルジも、この短期間で県がめまぐるしく変化したのを見守ってきた一人である。「タシヤンツィはすっかり生まれ変わった。つい最近まで、私たちは塩を買いに行くのにも数日歩いていかなければならなかった。それが、今では病院が1つ、基礎診療所が7つ、26の僻地診療所がある。2605世帯に水道が設置され、コミュニティスクール16校、小学校7校、初級中等学校1校、高等中学校2校、高校2校があるのです。」

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写真) 群集に昼食を振舞われる国王陛下

 幹線道路が開通したのは、もっとも遅かったものの、今では計90kmにもおよぶ農道、県道、幹線道路が建設中である。そのほかのインフラでも18の橋脚、127の電話、銀行、郵便局、200のケーブルテレビが設備されている。タシヤンツィ県知事のドルジ・ノルブによれば、今年に実施された国勢調査では県人口は1万7千623人であったという。
 かつて、タシヤンツィはDapas族とPhops族の後進地と考えられていた。しかし、ある16歳の学生は、現在では状況はまったく変わったと考えている。「私たちは、専門性をもった、近代教育をうけた世代です。過去は過ぎ去り日時代。この先、タシヤンツィと他の研の間に格差はなくなっていくでしょう。」彼のいうとおり、ほとんどのブータン国民は封建制から近代国家への移行をみをもって感じている。
 そのようなタシヤンツィの地だからこそ、住民にとって、国王陛下およびご一家と共に過ごしたナショナル・デーには非常に大きな意味があった。式典の終わりに華を添えたタシ・レベの声は、タシヤンツィの谷を超え、新しい時代へと続いているようであった。
 Jamkhar村の69歳のChuni Zangmoも他の多くの住民のように、家をすっかり戸締りし、一家で二日間歩いて式典の地までやってきた。ブータン人の誰もが創であるように、自宅には国王陛下の写真があり、それは他の例に漏れず絹のスカーフで縁取られ、一家の宝である。そして、この日、一家は国王陛下に実際にお目にかかる機会に恵まれたのである。そして、国王陛下が彼女の近くまで来たその瞬間、彼女は目を閉じ、陛下のご多幸をお祈りした。
 Toetsho村の60歳のAum Tendiは「国王陛下のお言葉をお聞きしたとき、私は呆然としてしまいました。だけれどなぜか私は国王陛下はいつでも私たちと共にあられる、ということ事を自然と感じたのです。世の中は絶えず変化しいくかもしれません。しかし、国王陛下は私たちと共にあられます。」「陛下のお言葉と共に涙が出てきました。」これは、その場にいた多くの人が共有した感情である。「何が起こっていくかはわかりません。だけれど、私は希望を持ち続けます。」
 ケザンは友人と共に、祝典に参加していた。1992年に県として独立したタシヤンツィの住民にとって、2005年12月17日のほど衝撃的な日はいまだかつてなかったであろう。人々は、たった今耳にした言葉をかみ締めるように静かに言葉を交わしていた。「今まで、国民は陛下に65歳で退位されないようにお願いしていました。それが、今では陛下に65歳まで王位にとどまられるように懇願しなければなりません。」 と、ケザンはクエンセルに述べた。
 他の例に漏れず、ボンデリンの前地区長にとってもこのニュースは衝撃的であった。「まるで太陽が沈んでいくようだ。2008年とは、早急すぎる。ほとんどの人が陛下はあと20年は王位におられるように感じている。」そう口にすると、彼はウマの手綱を手に取り、会場を後にした。
 声明文が発表されると、ブータンの人々は信じられずに国中あらゆるところでこの話題が広まった。「こんなことは人類史上、いまだかつてなかった。外国にとってはこれは象徴的なニュースかもしれない。しかしブータンにとっては深い悲しみ以外のなにものでもない。」これは、クエンセルに情報の真偽を確かめようと電話をしてきた、あるティンプ住民のコメントである。
 それにもかかわらず、一日も終わる頃になると、人々は暗雲のなかの一筋の光を感じ始めていた。サンゲイ・ドルジは高校生。落胆する両親を尻目に、サンゲイ自身は陛下の超越した賢さに敬意を表明している。「陛下は僕たちの父親のようなお方です。父親はその地位を失うことはなく、どんなことがあっても子供を見捨てることはありません。そう考えれば、後悔すべきことなど何もないのです。」
 ブータンでの常識のひとつが、国王陛下のご決断を全面的に信じる、ということである―それがどんなに絶望的なものであっでもである。
 パロで教職につくある男性は次のようにクエンセルにコメントを寄せている。「私はただ自分自身を慰めようとしているだけなのかもしれません。しかし、私は陛下のご英断を全面的に信じることを決意しています。私は今のところ絶望はしていません。」。彼の同僚の女性教師は「前を向いて何が起こっていくのかを見るのは楽しみです。陛下のご英断がどのように広まっていくのかを私たちは目の当たりにしていくことでしょう。」
 タシは、夏をブムタンのクルテ寺を巡礼してすごし、冬を息子が経営するお店の暖炉の脇にすわりすごす81歳の男性である。「私の世代は、昔ある懸命な国王のあとをこれまた懸命な国王が引き継いだことを見てきました。トンサ・ペンロップは国王陛下のご子息であられる。国王陛下のお考えは、その後子息を通じて輝き続けるに違いない。皇太子殿下が、そのご治世においてもご助言を受けられるというのは、よい状況と私は考えている。」
 ボンデリンのタシ・ウォンチュックは30歳。彼は、今こそブータンの若い世代が国の発展を担う必要がある、と考えている。「これは偉大なる挑戦である。私たちは全力で新しい王を支援しなければならない」
 ヤラン地区のウゲン・ノルブは、国王陛下が権力の移譲に踏み切られたのは陛下ご自身が、皇太子殿下の能力を認められたため、と考えている。「国王陛下は若干16歳でその地位に就かれた。陛下はご自分が何をなさっているのかよくご存知のはずである。いつの時代も、息子は父親の意思を受け継いできた。今こそ、われわれこそが子供たちにその意思をつなげていくときなのである。」
 2005年のナショナル・デーは、老若男女を問わず国中のブータン人にとって、大きな衝撃であり人々は衝撃に飲み込まれている。この衝撃はあまりにも大きいので、国民一人一人がこのご決断の意味をしり、そして理解していくには少し時間がかかるかもしれない。しかし、まずだいいっぽとして、人々は新たな現実に向き合う必要があるといえよう。
 何にしろ、これは陛下によるご決断である。古くからの言い伝えによれば、国王陛下のご意思は山よりも重く、金よりも貴重なのである。

(原文はhttp://www.kuenselonline.com/article.php?sid=6345)
 

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