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ブータン−21世紀の万博で(特別記事)

SF映画の一場面のように空中歩道が大きな弧のパノラマを描きだす。ハイテク技術の粋を集めたドーム型パヴィリオンが点在する。会場間を磁力と燃料電池を動力とする無人の電車、バスが騒音を発することもなく人々を輸送する。

 日本式の宮廷庭園をイメージして作られた会場は木々で覆われ、花が咲き誇り、滝が流れ、丘そのものが巨大な庭のようである。
 2005年愛・地球博へようこそ。ここでは、環境問題の啓発をテーマとした展示品から、最新の技術まで様々な陳列品がある。日本で第4の都市、名古屋で開催中の愛知万博には、122にも及ぶ文化・言葉を異にする国々が、今日私たちが直面する問題、経験、そして挑戦を共有する場がある。
 世界から集った建築家やデザイナーは万博のテーマである「自然の叡智」を表現しようと、展示品に様々な工夫を凝らしている。それと同時に多くの参加国が最新の技術を駆使し、人間と自然の調和にむけた様々な試みも披露している。
 日本の展示品のひとつに、竹で作られた90m×70mの巨大な繭のようなパヴィリオンがある。このパヴィリオンには日本で開発された光触媒作用という技術が用いられている。こう触媒作用は室内を冷やす作用を持つ。よって、夏季に発生するエアコンへの計り知れない需要を減少させることができる。ドイツは「ビオニス(bionis)」を促進するパヴィリオンを完成させた。この概念は自然と技術の共生を表している。他のパヴィリオン、たとえばシンガポールでは、都市開発の基礎として生物多様性の重要性が強調されている。
 ほとんどのパヴィリオンでは、それぞれの国家が文化、科学、そして環境をどのように築いてきたか、コンピューターを駆使して紹介している。
 また、非常によく保存された1万8千年前のマンモス象も展示されている。この象はシベリアから発見されたもので、子供たちに気候変動の恐ろしさを伝えている。
 しかし、なんと言っても万博の目玉は日本の技術開発である。ヴァーチャル・リアリティの世界で繰り広げられるショー、文化の紹介、そして人間の形をしたロボットによる芸などが紹介されている。
 日立館のヴァーチャル・リアリティのサファリでは、観客は手首にまいたセンサーを通じて、3D画像の世界を体験できる。このヴァーチャル・リアリティの世界では、空中に立体像が体現され、まさに自分の手でその対象を体験できる。たとえば、蝶を追い、手で捕まえ、どの角度からも蝶の姿を確認することができる。蝶を捕まえる手を広げると、蝶は飛び立ち、ヴァーチャル・リアリティのジャングルの仲間たちのもとへと戻るのである。
 さらに、対象物を認識できる双眼鏡もある。使用者が双眼鏡で風景を眺めると、双眼鏡が特定の対象を認識し、その詳細な情報を示すのである。例えば、双眼鏡を使ってある花を眺めると、双眼鏡はその花が何なのかを示すのである。
 その中でも群を抜くのがトヨタのロボットであろう。数時間待ちが必死のショーでは、ロボットが舞台に登場し、片足立ちでバランスをとってみせる。また別のロボットは完璧に接合された手を空中に掲げて、音楽の演奏を始める。さらに、「i-foot」と名付けられたロボットは人々の移動補助を行う。これは、従来の車椅子に変わって、階段を上下するのである。
 しかし、ブータン・パヴィリオンは違う。この、ハイテク・実用的な展示があふれる中で、ブータン・パヴィリオンは万博のサブ・テーマである「人生の「わざ」と知恵」を追求している。祈りの旗、木材の使用、伝統的手法を用いた竹製弓矢等の手工芸の展示。つまり、先端技術は一切使用されておらず、ブータン館はまるで過ぎ去った時代の遺物のようだ。訪問者は静まり、落ち着き、思いをはせるのである。

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写真)ブータン・パヴィリオン内部の様子。毎日13,000人の観光客が訪れる。
 
 その様子はまさに、万博のテーマと重なる。訪問者はそのシンプルさ、そして幸福と平和のメッセージに心をとらわれるのである。
「ブータン・パヴィリオンは神聖で、とても不思議な体験をしました。」ブータン館を出た後、名古屋にある電話会社でプログラマーをするタケシ・トモミはこうコメントする。「今でもこのような国が存在するなんて信じられません。」
 また、ブータン・パヴィリオンを色彩と、活気にあふれている、と感じる人もいる。そして、ブータンのイメージは多くのお年寄りたちに、古き良き時代に対する郷愁を思い起こさせるようだ。ある若い日本人男性は精神が落ち着く、と言ってブータン・パヴィリオンをほぼ毎日訪れている。
 ブータン・パヴィリオンの訪問者は、毎日約13,000人に上る。訪問者はまず、色鮮やかな祈りの旗で飾られた伝統的な片持ち梁の橋に導かれてゆく。
 パヴィリオン内では、ブータン人の笑顔の写真が人々を迎える。そして、次に訪問者が目にするのは自然と調和するブータンの日常生活を紹介した絵画である。そして、その後は活気にあふれ、色彩豊かなブータン建築と手工芸が飾られたラプセ(窓枠)とナムゲルケサンであり、その中には仏像が鎮座している。6m×3mのトンドルも壁にかけられており、その下には国内で最高級の織物や工芸品が展示されている。
 ブータン内務文化省大臣Lyonpo Jigmi Y Thinleyは、ブータン・ナショナルデーの間、現地を訪れ、次のように述べた。パヴィリオンはブータンは、経済発展、精神的な豊かさ、文化の保全、そして自然保護のバランス、というブータンの開発哲学を伝えている、という。
 ブータン館長のダショー・ナド・リンチェンがクエンセルによせたコメントによれば、ブータンは、他国に比べて、予算面、そしてスペース面での制約にもかかわらず、非常に良い展示を行っているという。
「訪れる人の多さと、パヴィリオンに対する高い評価が励ましとなっています。」ダショー・ナド・リンチェンは言う。ブータン・パヴィリオンには約60万ドルが費やされ、この費用は日本の友人たちからの支援でまかなわれている、と彼は付け加えた。
 ブータン・パヴィリオンは一般公開に先立ち3月25日に実施された内覧会においてすでに、日本で非常に高い評判を得た。海外ではじめて仕事をするブータン人大工たちを撮影した日本のテレビ局もあった。撮影はパヴィリオン建設の様子だけではなく、職人たちが生活を送る愛知県の仏教寺院にまで及んだ。
「職人たちのバックグラウンド、その仕事の難しさ、技巧を凝らした手法は非常に多くの日本人の心と目を奪った。」国会議員の吉田貢氏はこう述べた。彼によると、日本においてブータンはその禁煙政策とGNHの開発哲学で知られているという。
 6月8日には、日本の徳仁皇太子がブータン・パヴィリオンを訪問された。

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写真)6月8日、ブータン・パヴィリオンを訪問した日本の皇太子を歓迎する
ダショー・ナド・リンチェン
 
 今年の9月25日までに世界中から1500万人が万博を訪れる見込である。
 
 
(報告者 Kencho Wangdi—愛知)
 
(原文は http://www.kuenselonline.com/article.php?sid=5603 )

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